不動産の鑑定、評価、調査、コンサルタントの株式会社石上不動産鑑定(代表取締役 不動産鑑定士・司法書士 石上達郎)は大阪市中央区にあります。司法書士事務所を併設し、不動産と法律の総合コンサルタントを行っています。

不動産鑑定評価基準(その8)

第8章鑑定評価の手順

鑑定評価を行うためには、合理的かつ現実的な認識と判断に基づいた一定の秩序的な手順を必要とする。この手順は、一般に鑑定評価の基本的事項の確定、処理計画の策定、対象不動産の確認、資料の収集及び整理、資料の検討及び価格形成要因の分析、鑑定評価方式の適用、試算価格又は試算賃料の調整、鑑定評価額の決定並びに鑑定評価報告書の作成の作業から成っており、不動産の鑑定評価に当たっては、これらを秩序的に実施すべきである。

第1節鑑定評価基本的事項確定

鑑定評価に当たっては、まず、鑑定評価の基本的事項を確定しなければならない。このため、鑑定評価の依頼目的及び条件について依頼者の意思を明瞭に確認するものとする。

第2節処理計画策定

処理計画の策定に当たっては、前記第1節により確定された鑑定評価の基本的事項に基づき、実施すべき作業の性質及び量、処理能力等に即応して、対象不動産の確認、資料の収集及び整理、資料の検討及び価格形成要因の分析、鑑定評価方式の適用、試算価格又は試算賃料の調整、鑑定評価額の決定等鑑定評価の作業に係る処理計画を秩序的に策定しなければならない。

第3節対象不動産確認

対象不動産の確認に当たっては、前記第1節により確定された対象不動産についてその内容を明瞭にしなければならない。対象不動産の確認は、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査、聴聞、公的資料の確認等により、的確に行う必要がある。

Ⅰ 対象不動産の物的確認

対象不動産の物的確認に当たっては、土地についてはその所在、地番、数量等を、建物についてはこれらのほか家屋番号、建物の構造、用途等を、それぞれ実地に確認することを通じて、前記第1節により確定された対象不動産の存否及びその内容を、確認資料(第4節のⅠ参照)を用いて照合しなければならない。
また、物的確認を行うに当たっては、対象不動産について登記簿等において登記又は登録されている内容とその実態との異同について把握する必要がある。

権利の態様確認

権利の態様の確認に当たっては、前記Ⅰによって物的に確認された対象不動産について、当該不動産に係るすべての権利関係を明瞭に確認することにより、前記第1節により確定された鑑定評価の対象となる権利の存否及びその内容を、確認資料を用いて照合しなければならない。

第4節資料収集及び整理

鑑定評価の成果は、採用した資料によって左右されるものであるから、資料の収集及び整理は、鑑定評価の作業に活用し得るように適切かつ合理的な計画に基づき、実地調査、聴聞、公的資料の確認等により的確に行うものとし、公正妥当を欠くようなことがあってはならない。
鑑定評価に必要な資料は、おおむね次のように分けられる。

確認資料

確認資料とは、不動産の物的確認及び権利の態様の確認に必要な資料をいう。確認資料としては、登記簿謄本、土地又は建物等の図面、写真、不動産の所在地に関する地図等があげられる。

要因資料

要因資料とは、価格形成要因に照応する資料をいう。要因資料は、一般的要因に係る一般資料、地域要因に係る地域資料及び個別的要因に係る個別資料に分けられる。
一般資料及び地域資料は、平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきである。個別資料は、対象不動産の種類、対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである。

事例資料

事例資料とは、鑑定評価の手法の適用に必要とされる現実の取引価格、賃料等に関する資料をいう。事例資料としては、建設事例、取引事例、収益事例、賃貸借等の事例等があげられる。
なお、鑑定評価先例価格は鑑定評価に当たって参考資料とし得る場合があり、売買希望価格等についても同様である。

第5節資料の検討及び価格形成要因の分析

資料の検討に当たっては、収集された資料についてそれが鑑定評価の作業に活用するために必要にして十分な資料であるか否か、資料が信頼するに足りるものであるか否かについて考察しなければならない。
この場合においては、価格形成要因を分析するために、その資料が対象不動産の種類並びに鑑定評価の依頼目的及び条件に即応しているか否かについて検討すべきである。
価格形成要因の分析に当たっては、収集された資料に基づき、一般的要因を分析するとともに、地域分析及び個別分析を通じて対象不動産についてその最有効使用を判定しなければならない。
さらに、価格形成要因について、専門職業家としての注意を尽くしてもなお対象不動産の価格形成に重大な影響を与える要因が明らかでない場合には、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用することが必要である。
ただし、依頼目的や依頼条件による制約がある場合には、依頼者の同意を得て、想定上の条件を付加して鑑定評価を行うこと又は自己の調査分析能力の範囲内で当該要因に係る価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。
この場合、想定上の条件を付加するためには条件設定に係る一定の要件を満たすことが必要であり、また、推定を行うためには客観的な推定ができると認められることが必要である。

第6節鑑定評価方式の適用

鑑定評価方式適用に当たっては、鑑定評価方式を当該案件に即して適切に適用すべきである。
この場合、原則として、原価方式比較方式及び収益方式三方式を併用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により三方式の併用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。

第7節試算価格又は試算賃料調整

試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。
試算価格又は試算賃料の調整に当たっては、対象不動産の価格形成を論理的かつ実証的に説明できるようにすることが重要である。このため、鑑定評価の手順の各段階について、客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを適切に反映することによりこれを行うものとする。この場合において、特に次の事項に留意すべきである。

Ⅰ 各試算価格又は試算賃料再吟味
  • 1.資料の選択、検討及び活用の適否
  • 2.不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否
  • 3.一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否
  • 4.各手法の適用において行った各種補正、修正等に係る判断の適否
  • 5.各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性
  • 6.単価と総額との関連の適否
Ⅱ 各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断
  • 1.対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性
  • 2.各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性
第8節鑑定評価額決定

以上に述べた手順を十分に尽した後、専門職業家としての良心に従い適正と判断される鑑定評価額を決定すべきである。
この場合において、地価公示法第2条第1項の都市計画区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない。

第9節鑑定評価報告書作成

鑑定評価額が決定されたときは、鑑定評価報告書を作成するものとする。

第9章鑑定評価報告書

鑑定評価報告書は、不動産の鑑定評価の成果を記載した文書であり、不動産鑑定士等が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明し、その責任を明らかにすることを目的とするものである。

第1節鑑定評価報告書作成指針

鑑定評価報告書は、鑑定評価の基本的事項及び鑑定評価額を表し、鑑定評価額を決定した理由を説明し、その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士等の責任の所在を示すことを主旨とするものであるから、鑑定評価報告書の作成に当たっては、まずその鑑定評価の過程において採用したすべての資料を整理し、価格形成要因に関する判断、鑑定評価方式の適用に係る判断等に関する事項を明確にして、これに基づいて作成すべきである。

鑑定評価報告書の内容は、不動産鑑定業者が依頼者に交付する鑑定評価書の実質的な内容となるものである。
したがって、鑑定評価報告書は、鑑定評価書を通じて依頼者のみならず第三者に対しても影響を及ぼすものであり、さらには不動産の適正な価格の形成の基礎となるものであるから、その作成に当たっては、誤解の生ずる余地を与えないよう留意するとともに、特に鑑定評価額の決定の理由については、依頼者その他第三者に対して十分に説明し得るものとするように努めなければならない。


第2節記載事項

鑑定評価報告書には、少なくともⅠ~Ⅸの事項について、次に記する点に留意して記載しなければならない。

鑑定評価額及び価格又は賃料種類

正常価格又は正常賃料を求めることができる不動産について、依頼目的及び条件により限定価格、特定価格又は限定賃料を求めた場合は、かっこ書きで正常価格又は正常賃料である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない。
また、総論第7章、第2節、Ⅰの1.に定める支払賃料の鑑定評価を依頼された場合における鑑定評価額の記載は、支払賃料である旨を付記して支払賃料の額を表示するとともに、当該支払賃料が実質賃料と異なる場合においては、かっこ書きで実質賃料である旨を付記して実質賃料の額を併記するものとする。

鑑定評価条件

対象確定条件又は依頼目的に応じ付加された地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件についてそれらが妥当なものであると判断した根拠を明らかにするとともに、必要があると認められるときは、当該条件が付加されない場合の価格等の参考事項を記載すべきである。

Ⅲ 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び対象不動産に係る権利の種類
鑑定評価の依頼目的及び条件と価格又は賃料の種類との関連

鑑定評価の依頼目的及び条件に応じ、当該価格を求めるべきと判断した理由を記載しなければならない。
特に、特定価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠、また、特殊価格を求めた場合には文化財の指定の事実等を明らかにしなければならない。

価格時点及び鑑定評価を行った年月日

後日対象不動産の現況把握に疑義が生ずる場合があることを考慮して、実際に現地に赴き対象不動産の現況を確認した年月日(実査日)をあわせて記載しなければならない。

鑑定評価額決定の理由要旨

鑑定評価額の決定の理由の要旨は、下記に掲げる内容について記載するものとする。

  • 1.地域分析及び個別分析に係る事項
    同一需給圏及び近隣地域の範囲及び状況、対象不動産に係る価格形成要因についての状況、同一需給圏の市場動向及び同一需給圏における典型的な市場参加者の行動、代替、競争等の関係にある不動産と比べた対象不動産の優劣及び競争力の程度等について記載しなければならない。
  • 2.最有効使用判定に関する事項
    最有効使用及びその判定の理由を明確に記載する。なお、建物及びその敷地に係る鑑定評価における最有効使用の判定の記載は、建物及びその敷地の最有効使用のほか、その敷地の更地としての最有効使用についても記載しなければならない。
  • 3.鑑定評価方式適用に関する事項
  • 鑑定評価の三方式を併用することが困難な場合にはその理由を記載するものとする。
  • 4.試算価格又は試算賃料の調整に関する事項
    試算価格又は試算賃料の再吟味及び説得力に係る判断の結果を記載しなければならない。
  • 5.公示価格との規準に関する事項
  • 6.その他
    総論第7章、第2節、Ⅰの1.に定める支払賃料を求めた場合には、その支払賃料と実質賃料との関連を記載しなければならない。
鑑定評価上不明事項に係る取扱い及び調査の範囲

対象不動産の確認、資料の検討及び価格形成要因の分析等、鑑定評価の手順の各段階において、鑑定評価における資料収集の限界、資料の不備等によって明らかにすることができない事項が存する場合の評価上の取扱いを明示する必要がある。
その際、不動産鑑定士等が自ら行った調査の範囲及び内容を明確にするとともに、他の専門家が行った調査結果等を活用した場合においては、当該専門家が調査した範囲及び内容を明確にしなければならない。

Ⅷ その不動産鑑定評価に関与した不動産鑑定士等の対象不動産に関する利害関係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係の有無及びその内容
Ⅸ その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士等の氏名
第3節附属資料

対象不動産等の所在を明示した地図、土地又は建物等の図面、写真等の確認資料、事例資料等は、必要に応じて鑑定評価報告書に添付するものとする。
なお、他の専門家が行った調査結果等を活用するために入手した調査報告書等の資料についても、必要に応じて、附属資料として添付するものとする。ただし、当該他の専門家の同意が得られないときは、この限りでない。

不動産鑑定評価基準(その7-5)(前へ) | 不動産鑑定評価基準(その9)(次へ)

コンテンツ・メニュー


Web検索

月別過去記事



Yahoo!メルマガ メルマガ登録はこちら!